栄養医学とはどのようなものでしょうか
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ここまでは、栄養医学の全体の概観を説明しましたが、次に、栄養医学の理論的支柱となる分子整合という理論を細胞分裂と遺伝子の役割から説明いたしましょう。

遺伝子による細胞の再生

私たちの生命の始まりは、たったひとつの細胞〈受精卵〉です。生物学的に身体の成長が終わる20歳までに、ひとつだった細胞が60兆を超える数の細胞に分裂、増殖します。全ての生物は成長過程において細胞を次から次に分裂させて身体をつくります。身体が完成すると今度は古くなった細胞を新しいものと交換する作業(新陳代謝)を続けていきます。DNA(デボキシリボ核酸)は細胞を作るための設計図です。その設計図を基に、RNA(リボ核酸)が細胞を形作るのに必要なタン白質を生成します。これらDNA、RNAを総称して核酸と呼びます。

必要な栄養素とは

人間の身体は細胞によって構成されています。そして細胞の全ての活動は栄養に依存しているのです。細胞は、常に取り壊され、再び造られている、つまり常に新陳代謝しています。不足している栄養素が補われることによって、新たに造られる細胞はより良い状態になり、症状が徐々に改善されていくのです。

 

但し、栄養が足りたり足りなかったりという状態では、病んだ状態を回復するということは難しいでしょう。欠陥住宅や建物が話題になっていますが、遺伝子という設計図はしっかりしているのですから、充分な原料を絶えず補給することが健康づくりの基本となります。また必要な栄養が補給されていると傷ついたDNAも修復されていきます。

 

このようにして栄養医学というのは、薬のように定量を定期的に服用するというのではなく、病状と個体差、そして環境、ストレスなどを考慮して、必要な栄養素と量を医者と相談しながら、患者自らが管理することが必要とされるのです。ここに、KYB(Know Your Body 健康自主管理)運動が始められた意義があります。

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身体で必要量を処方できない栄養成分には、必須アミノ酸、必須脂肪酸というように「必須」という言葉がつきます。ビタミンには「必須」という言葉がつかないので摂らなくても大丈夫?…いえ、ビタミンは全て必須です。細胞の修復には必須の栄養素全てが必要です。

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栄養素の必要量には、個体差があります

成長期、妊娠期、授乳期、高齢化など、人はそれぞれ栄養素を特別に必要とする時期があります。スポーツ選手や特別な仕事をしている人々は、普通の食生活ではとても栄養が足りません。また、肝臓病、甲状腺疾患、ガン、その他、治療のために特別な栄養素を必要とする人々もいます。更に、体質や代謝障害などである種の栄養素を普通よりも必要とする人々がいます。これらの人々は、他の人と同じ栄養を摂っていても、足りない、或いは摂取できないということがあります。

 

一般に言われている所要量のほかに、イライラしやすい・肌が荒れやすい・風邪を引きやすいなど個人の体質に合わせて摂取する栄養素を選び、必要量を考えることも大切です。RDA(Recommended Daily Allowances 一日当たり摂取勧告)という数値が、アメリカのサプリメントには昔は記入されていたことがありますが、最近はそういう一律的な指導は適切でないと外されることが多くなりました。

 

季節要因も充分考慮しなければなりません。季節の変わり目には身体が特別にビタミンBやタン白質などの栄養素を必要とします。これが不足すると精神的な障害をもたらします。暑い夏には、ビタミンCやE、リポ酸などの抗酸化作用を持つものが大量に必要です。

 

単に栄養素を摂取し症状を改善して満足するのではなく、身体の中で栄養素がどのように働いて症状・体質を改善したのか・今までの食生活で足りなかったことは何かを振り返って、今後の生活に生かす事が健康に過ごすポイントです。

栄養素の必要量・個体差を知るためには、血液検査による分析が必要です。

検査結果より、足りない栄養素、病態改善のために大量摂取が必要な栄養素を医師が処方します。

ホメオスターシス

ホメオスターシス(生体恒常性)とは、外部環境の変化に対して、体内の調節機能が働くことによって、身体の状態が常に―定に保たれていることを言います。例えば外の気温が40℃であっても、マイナス10℃であっても、それによって体温が著しく上がったり下がったりすることはありません。その調節機能が働くためには、当然エネルギーが消耗され、必要なビタミン・ミネラルが使われます。しかし、栄養状態が悪かったり、悪条件が続いたり、重なったりすることによって、調節機能が歪みを起こし、ホメオスターシスが次第に乱れることになります。

 

健康を支える三本柱は運動、栄養、休養ですが、この中で最も大切な栄養が足りなかったり、バランスが崩れたりすると、ストレスや加齢に十分対応できなくなります。こういう状態が続くと、ホルモン、自律神経に異常が生じます。その結果、人が本来持っている生体恒常性(ホメオスターシス)が乱れて、発病することとなります。ホメオスターシスが健全であり、身体が健康であれば、病原菌にも対抗できるのです。外国では何でもない最近やウィルスによる病気が、日本人には命に関わるような重症になることが見られています。

 

私たちの身体を作り出しているのは、薬ではなく栄養です。体内に取り込まれた栄養が細胞の隅々にまで行き渡って重要な役割をしているのです。今、私たちは、身体が必要としている栄養を十分摂っているでしょうか。

 

「現代の食生活、環境は健康的でしょうか」

 

食物・食品に含まれる栄養素の量と質が著しく悪くなっています。近年、養殖・栽培技術が進歩し、旬でない時期でも美味しい野菜・肉・魚介類がいつでも手に入ります。昔ながらの露地栽培に比べて、土壌がやせ日照不足により各栄養素が昔に比べ減少しているものが多くなっています。食品成分表を見ると版が改訂する度にミネラルの減少が明らかになります。普段、食事をしっかり食べていても必要量に達しないことがあり、偏食・欠食では栄養素がより不足して体調不良、発病の引き金になる可能性があります。

 

加工食品では、素材の食物に含まれていたビタミン・ミネラルの多くが損なわれ、また有害な添加物が含まれることがあります。加工食品、半加工食品、冷凍食品などは加工や保存によってビタミン、ミネラルが損失します。また、添加物が多く使われています。穀類、砂糖、塩などは精製されて、ビタミン、ミネラルがほとんど残らないようになってしまっています。

 

食生活の変化も著しく悪化しています。若い世代だけでなく都市生活者では、ファーストフードやコンビニ弁当に見られるような脂肪、砂糖の非常に多い食事が増えています。都市化が地方にも広まり、食生活が日本全体で悪化しているのが事実です。スロー・フードなどの必要が叫ばれていますが、健全な食生活を保つことができるのは、非常に限られた一部の人であり、一般の人にとって、家族が共にゆっくりと手作りした料理を日常的に取るということは、困難になっています。

 

生活環境も悪化しています。現代社会では、人はみな過度のストレスにさらされています。不規則な生活、アルコール、タバコ、カフェイン、大気汚染、そして有害電波や電磁波、放射線などによって体内の栄養素が消耗し、細胞を傷つけるフリーラジカルが発生します。テレビやコンピューターを長時間見ることが多くの人々にとって日常化し、その疲労・ストレスは多くの心身の病気の原因ともなっています。