健康生活へのアドバイス

エネルギーを作り出すTCAサイクル

TCA(tricarboxylic acid cycle)サイクルとは、人間の体の中でエネルギーを作り出していく回路、言わば「身体の中のエネルギー工場」です。別名、クエン酸回路、クレブス回路と言われており、細胞内のミトコンドリアの中で働いています。私達の身体は、60兆個の細胞が重なって出来ていますが、TCAサイクルは、この全ての細胞の中で行われる代謝です。 

TCAサイクルの図
食事で摂取した栄養のうち、三大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質はそれぞれブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸・グリセロールに分解されて細胞の中へ入り、アセチルCoAとなりTCAサイクルに入ります。その後、酸素を利用してクエン酸やコハク酸などの有機酸に変化しながら、二酸化炭素と水に分解され、ATPというエネルギーの基が作られます。
この回路が上手く回ることで、生命活動に必要なエネルギーを作り出してゆくのですが、回路にエネルギーの材料が入らない・回路が上手く回らない、等の原因によりエネルギーを充分に作り出せなくなると、エネルギー不足による疲労感、だるさ、集中力が続かない等、様々な症状が引き起こされます。特に最も影響がでるのが脳です。

炭水化物(糖質):主要なエネルギー源

炭水化物は糖質と食物繊維に分けられますが、食物繊維は人の消化酵素では消化されないため、主にエネルギーとして使われるのは糖質です。糖質は分解されて、最終的には最も小さいブドウ糖となります。このブドウ糖が、主にTCAサイクルのエネルギー源として使われます。
ブドウ糖が細胞の中へ取り込まれることが重要なのですが、ブドウ糖が細胞の中に取り込まれるにはインスリンの働きが重要となってきます。食事後、直ぐにブドウ糖を感知してインスリンが、細胞の中のGLUT4(グルコース トランスポーター)に働きかけ、ブドウ糖を細胞の中へ取り込みます。但し、脳・腎臓・網膜細胞・小腸粘膜・血球細胞は、インスリンに頼らずにブドウ糖を吸収するため、低血糖による悪影響がそのまま出ます。つまり、消費量が多く大事な器官なので、優先的に用いられるのですが、蓄えもないので、直ぐに影響が出るのです。
高血糖時には、多量に分泌されるインスリンによって細胞内にブドウ糖が多く取り込まれます。しかし、酵素の量には限りがあり、補酵素のビタミンB群なども不足すると、TCAサイクルの中に入ってエネルギーとなることができるブドウ糖の量は限られてきます。TCAサイクルに入れないブドウ糖は、脂肪酸から中性脂肪となったり、ピルビン酸から乳酸となったりします。
ゆっくりと食べたり、繊維の多いものを食べたりしてブドウ糖の供給を遅くすることが良いのは、少しずつ長時間にわたってブドウ糖が細胞の中へ取り込まれるので、持続してエネルギーを作り出せる為です。ゆるやかに細胞の中へ取り込まれたブドウ糖は、脂肪や乳酸に流れることなくTCAサイクルの中へ入り、持続してエネルギーを作り出すことが出来ます。砂糖に代表される単糖類、二糖類が多い食事は、ごはん(でんぷん)などの多糖類脂が多い食事と比べて脂肪を作りやすいため、砂糖を控えること、ゆっくり食べること、繊維が多いものを食べることは肥満解消にも良いです。
運動時など大量のエネルギーを必要とする時には、ブドウ糖を確保する他の経路があります。筋肉に蓄積されたグリコーゲンという糖の貯蔵をブドウ糖に戻す反応です。その際に乳酸という、筋肉痛や肩コリの原因になる物質が発生しやすくなります。この時にビタミンB群(特にナイアシン)を補給すると、乳酸がピルビン酸へと変わり、再度エネルギーへと使われるようになるので、筋肉の痛みが軽減されて楽になります。このようにして、炭水化物は主要なエネルギー源として最も早くに利用されていきますが、炭水化物のみならず、タンパク質や脂肪もエネルギーとして利用されます。

タンパク質:身体を作る主成分、エネルギー源

タンパク質は、筋肉・骨・毛髪・ホルモン・酵素など、身体の主成分となる栄養素ですが、タンパク質が分解されて生じるアミノ酸の一部も総エネルギーの約12%に利用されています。アミノ酸は、インスリンを介せずにブドウ糖に替わる、安定したエネルギー源であり、血糖値が下がりエネルギーが不足している時には、筋肉を分解してアミノ酸に変えて、その一部をエネルギーとして用いることも出来ます。
タンパク質がエネルギーとして使われる際には、VB2やVB6が必要となります。タンパク質を摂取しても、これらのビタミンB群が不足していると、エネルギーとして利用することが出来なくなります。
タンパク質は、血液の中に少なくなったブドウ糖を補充するのにも使われます。例えば、アミノ酸の1つであるグルタミンはケトグルタル酸となり、オキサロ酢酸にまでなると、ピルビン酸の上にあるホスホエノールピルビン酸へと変化してブドウ糖となります。このように、糖以外の栄養素を糖に変えることを「糖新生」といいます。脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖ですが、空腹状態でも、ある程度脳の機能を維持していけるのは、このようなメカニズムにより、糖ではないものを糖に変えて脳に供給しているからです。

脂肪:細胞膜の主な構成成分、エネルギー源

一般的に脂肪とは、中性脂肪のことをいいます。中性脂肪が分解されるとグリセロール1つと脂肪酸3つになります。飢餓時、低血糖時、高血糖時、エネルギーの消耗が激しい時などには、脂肪酸もエネルギーの材料として使われます。脂肪が分解された後、脂肪酸は、血液の中に入って利用されていきます。その為、血液検査で遊離脂肪酸が高くなっている場合は、脂肪酸がエネルギーとして利用されていることがわかります。
脂肪酸は炭水化物の代わりにエネルギーとなろうとするのですが、TCAサイクルの中に入れる脂肪酸の量には限りがある為、アセチルCoAの一部からケトン体という物質が作られます。ケトン体は、血中に入り込み、各臓器でエネルギーの産生に用いられます。脂肪酸からのエネルギー供給が進むほど、ケトン体が多く産生されます。ケトン体は酸性の物質である為、この状態が進むと血液が酸性になります(ケトアシドーシス)。血液検査での尿pHは血液のpHを表しますので、6以下の方は、このようなメカニズムで脂肪が優位にエネルギーとして利用されていることが考えられます。下痢・熱中症などによる脱水や、大量の清涼飲料水をがぶ飲みして起こるペットボトル症候群などは、ケトアシドーシスを引き起こす要因となります。ケトアシドーシスは、非常な吐き気、食欲不振、嘔吐、腹痛などの症状の原因となります。脂肪だけを消費させようとしてはなりません。
脂肪酸はカルニチンという物質と結合してアシルカルニチンとなり、ミトコンドリアの中へ入ることが出来ます(ミトコンドリアの中に入ると、TCAサイクルを回り、エネルギーとして使われていくことが出来ます)。このアシルカルニチンの生合成や働きにはビタミンC・ビタミンB群が必要となります。ビタミンCが不足すると脂肪が燃焼しづらくなるので、エネルギー不足となり、疲労を起こしやすくなります。
同じ機能性低血糖症であっても、血液検査の中性脂肪が高い方・低い方と別れていますが、中性脂肪が高い方は、糖質・脂質の過剰摂取やインスリン過剰分泌によって脂肪の合成が進み、VCや運動の不足で脂肪が上手く使われず蓄積されています。中性脂肪が低い方は、低血糖時に脂肪が脂肪酸に分解される反応が進み、脂肪酸がエネルギーとして使われてゆくためです。血液の中のブドウ糖が不足している際には、糖新生として、脂肪が分解されて出来たグリセロールもピルビン酸に変わり糖に変わることが出来ますが、その割合は数%ととても低いです。「脂肪酸」は、エネルギーになりますが、糖にはなりません。

酵素と補酵素

酵素は、主にタンパク質から出来ていて、摂取した栄養素を様々な物質に変化させる働きがあります。TCAサイクルが上手く回ると、水素イオンが発生しますが、この水素イオンを受け取るのが酵素です。酵素に水素イオンが次から次へと受け渡されていくと、エネルギーが作られます。酵素には色々な種類がありますが、その一つに「チトクローム系酵素」があります。この酵素は、ヘム鉄が原料となって出来ています。その為、鉄が不足している貧血の状態では、チトクローム系酵素が充分に作られず、エネルギーが不足する症状が生じます。 
ほとんどの酵素は、「補酵素」と結合することで、初めて酵素としての機能を果たす事が出来ます。補酵素は主にビタミンB群です。ビタミンB群が不足していると、酵素が充分に働けないので、エネルギーを作り出せなくなってしまいます。その為、TCAサイクルを円滑に回し、エネルギーを作る為には、ビタミンB群が必須となります。又、コエンザイムも補酵素の1つとして、重要な物質です。CoQ10はアセチルCoAからコレステロールを合成する過程で作られるので、血液検査でコレステロール値が低い方はCoQ10が不足していることが予想されます。

最近のマリヤ・クリニックの治療研究では、腸内環境もTCAサイクルの働きに大きく影響を与えていることが分かっています。詳細は院長や管理栄養士に御相談ください。