ナイアシン
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ナイアシン

欠乏症によるぺラグラの発症

ナイアシンは以前ビタミンB3 とも呼ばれ、ナイアシンアミド(ニコチンアミド)とナイアシン(ニコチン酸)の総称です。1937 年にぺラグラ( 注1) がナイアシンの欠乏症状であることが明らかになったことで発見されました。ナイアシンは人の体内に豊富に存在しており、その一部は体内で生合成できるので、あえて食品から補給する必要はないと考えられていました。しかし、実際は不足しやすい栄養素なのです。
ナイアシンは、食物から摂取する方法と体内で合成して作り出す方法によって供給されます。
ナイアシンを体内で生合成するためには、必須アミノ酸の1 つであるトリプトファンが必要です。この過程は非常に効率の悪いナイアシン供給ルート( 注2)、ナイアシンが足りない分をトリプトファンからの合成で補うと、摂取したタンパク質のアミノ酸スコアが落ちてしまい、タンパク質そのもののはたらきが低下する恐れがあります。このことから、どうしても食物からナイアシンを補給することが必要なのです。

はたらき

体内で、多様な 補酵素として活躍

ナイアシンは体内でニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)とニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸(NADP)と呼ばれる物質に変化して、脂肪や糖質を代謝するための酵素の補酵素としてはたらきます。体内の全酵素の20%にあたる、約500 種類の補酵素として機能します。

セロトニンの合成に必要

ナイアシンは、トリプトファンから神経伝達物質のセロトニン( 注3) が合成される際、ビタミンB6、マグネシウムとともに必要な栄養素です。

精神を鎮める

ナイアシンは脳内神経伝達物質の調整に関与して精神を鎮めるはたらきがあります。

幻聴や幻覚を抑える

体内でアドレナリンが分泌される際、抗酸化物質が不足しているとアドレナリンが酸化してアドレノクロムとなりやすく、幻聴や幻覚の原因となることがあります。ナイアシンはビタミンCとの併用で、この反応を抑えることができます。

アルコールの代謝に関与

アルコールが代謝される際に、大量にナイアシンが消費されます。

コレステロールやリポタンパクの血中濃度低下作用

肝臓における脂質合成を抑制します。ナイアシンのみの作用です。

血糖上昇作用

ナイアシンには、血糖値を上昇させる作用があります。逆に、ナイアシンアミド( 注4) にはインスリン分泌を促進して血糖値を下げるはたらきがあります。

がん治療に良いはたらきをする

ビタミンCとの相乗作用(注5) によって、発がんを抑制します( 注6)。

血管拡張効果

狭心症、心筋こうそく、脳こうそくの予後を改善します。

メニエール症候群および片頭痛の改善

ナイアシンは、血管を拡張し血行を良くすることにより、メニエール症候群や片頭痛の症状を改善します。

二日酔い予防

ナイアシンはビタミンB1 、マグネシウムとともに二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドを分解する作用があります。

不足すると

身体の代謝に異常が起こりさまざまな症状が

ナイアシンが不足すると身体の代謝が十分に行われなくなり、エネルギー不足の症状や神経症状などさまざまな症状が起こります。
アドレナリンやエストロゲンの過剰分泌や、リノール酸の過剰摂取などはトリプトファンからナイアシンを生成するのを抑制します。また、ストレスにより消耗するほか、新鮮な肉や卵、豆類が少ない食事をし続けるとナイアシンは欠乏しがちです。ナイアシン欠乏により、以下の症状が出現しやすいと考えられます。

皮膚炎、口内炎、胃腸病

特に胃酸の分泌力低下に伴う栄養の吸収力低下、腸内ガス過剰、悪臭の便などが起こる。

舌炎

舌の先端がうっ血して赤く、味みらい蕾が赤く大きくなる「いちご状舌」を呈する。さらに正中線に裂け目や割れ目が生じ、舌の縁にはぎざぎざが現れ、舌は赤くつるつるの状態となる。

神経症状

うつ症状、集中力欠如、食欲不振などを起こす。

太陽光線過敏症

皮膚が太陽光線に特に敏感になるのはナイアシン欠乏の初期症状。アルコール依存者やタンパク質摂取不足者に多い。

摂り方

効き目は多岐にわたるが 副作用には注意
ナイアシン摂取が有効な症状

• 口臭
• 性格の急な変化(ひがみっぽくなった、等)
• 片頭痛の激しいとき
• 胃アトニーなど(粘膜の血流改善をしたいとき)
• 高コレステロール血症(ビタミンE、EPA と一緒に)
• 強い日差しで起こる皮膚炎、口唇炎、口内炎(ビタミンB2、ビタミンB6 と一緒に)
• 夏でも冷える(ビタミンE、ヘム鉄と一緒に)
• うつ、無力感(プロテインと一緒に)
• 統合失調症の場合(プロテイン、ビタミンB6、ビタミンC、カルシウム、マグネシウムと一緒に)
• 不眠時(プロテイン、ビタミンB 群、カルシウム、マグネシウムと一緒に)
• 心筋こうそく、脳血栓の予後(ビタミンE、EPA と一緒に)
• メニエール症候群の症状緩和(ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE と一緒に)

(補足)マリヤ・クリニックでは低血糖症の症状改善に用います。特に、日中の眠気、めまい、うつ症状の改善には非常に効果的です。
(注意)活動性かいよう疾患、活動性肝臓疾患、高トリグリセライド血症、高尿酸血症、高血圧の人は、ナイアシンの大量摂取は避けた方が良いでしょう。

副作用に注意

胃酸過多の人は、ナイアシンの摂取によって、胃の痛みや吐き気、下痢をおこすことがあります。酸性であるナイアシンが胃の酸度を増加させることで、胃粘膜刺激症状をおこすのだと考えられます。ナイアシンアミド、イノシトール( 注7)を加えたナイアシンでこの症状は避けることが可能です。
ナイアシンは一度に大量に摂ると、顔が紅潮したり、かゆみが出たりすることがあります。血管壁で炎症を引き起こすプロスタグランジンE1 の合成が促進され、血流量が増えたり、ヒスタミンの遊離が促されたりするからです。こうした症状は一週間くらいナイアシンを摂り続け、血中濃度が安定すると、たいてい治ります。統合失調症では、この症状が出ることは少ないです。

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注釈

注1
荒れた皮膚の意味のイタリア語に由来する疾患。ナイアシン不足と日光に当たらないことにより発症する。光線過敏症を発し、消化器が侵される。ペラグラは南米などとうもろこしを主食にしている地域で起こりやすい病気である。とうもろこしにはナイアシンの材料であるトリプトファンが少ないのがその理由。

注2
トリプトファン60mg からナイアシン1mg しか生合成できない。

注3
カテコールアミンによる過剰な興奮や不安を抑え、神経症状の改善(不眠、不安、うつの改善)に寄与する神経伝達物質。
また、セロトニンは、体温調節、睡眠調節、摂食抑制、血圧調節、性ホルモン分泌の調節も行う。また、セロトニン自身、睡眠を促す作用のあるメラトニンという物質になる。

注4
ナイアシンの前駆物質。

注5
ビタミンC とともに抗がん剤の効力を高め、放射線治療効果も高める。

注6
傷ついたDNA を修復する酵素の活性を高め、細胞ががん化するのを抑える。

注7
ビタミン様物質の1つ。生体内でグルコースより生合成される。さまざまな食品に広く含有される。