マグネシウム
マグネシウムは身体内で7 番目に多いミネラルで心臓、腎臓、骨にその全体の3 分の2 が含まれています。カルシウム、ビタミンC、ナトリウム、カリウム、リンの代謝とバランスをとるのに必要であるとともに、神経、筋肉が効果的に機能するのに不可欠です。タンパク質と糖質の代謝に必須で身体の300種以上の酵素反応を助ける役割を果たします。現代において不足しやすいミネラルの1 つです。
はたらき
脳内ホルモンであるセロトニンやGABA を作る上で、ビタミンB6 とともに補酵素的役割をする。また神経伝達物質の放出と受容体への結合にも大きく関与する。このことから、不安、うつ、不眠、多動などを鎮める。
カルシウムの過剰な細胞への取り込みを防ぐ。そのことで筋肉・血管の収縮を抑え、虚血性心疾患や不整脈、高血圧、脳こうそくを予防する。
腎結石の原因となるカルシウム塩の溶解度を増やす( 注1)。
TCA サイクルをはじめ、体内の代謝に必要な300 以上の酵素の補助因子としてはたらく。エネルギー産生やタンパク質代謝、ホルモン分泌を促す。脂肪燃焼、コレステロール合成抑制作用、脂肪分解作用により、肥満を防止し、脂質代謝を改善し、動脈硬化を抑制する。
上記のほか、血小板の凝集抑制、片頭痛の改善、
抗ストレスなどのはたらきもあります。
マグネシウムは天然のカルシウム拮抗剤
代表的な降圧剤に、カルシウム拮抗剤という薬があります。そ
のメカニズムは、カルシウムが細胞内へ入る入口(カルシウムチャ
ンネル)に結合して、カルシウムが細胞の中に入るのを妨げます。
これにより血管平滑筋の収縮が抑えられ、血圧が上がらないよう
にします。カルシウムの入り口はマグネシウムと一部共通なので、
血液中のマグネシウム濃度を上げると、カルシウムが細胞内に入
るのを妨げ、高血圧を予防することになります。このように、マ
グネシウムは細胞内にカルシウムが入りすぎないように門番の役
を果たしています( 注2)。
不足すると
マグネシウムは、ビタミンB1、B2、B6 が体内ではたらくときに必要とする酵素の構成要素です。そのため、マグネシウムの不足はビタミンB 群の十分なはたらきを損ない、以下のような症状が現れます。
抑うつ、記憶障害、幻覚、錯乱、昏睡、不眠、譫妄(せんもう)。
だるい、しびれる、締め付けられるような頭痛。
身体がチクチク、ムズムズする。
こむらがえり、高血圧、脳こうそく、心筋こうそく、狭心症、脳内血管の過度な収縮後の過膨張が原因の片頭痛。
血小板内のマグネシウムが欠乏すると、血小板が凝集しやすくなり、糖尿病で合併症が起こりやすい一因となる。
エネルギーが産生しにくくなる。
心筋の電気伝導に異常が起こる。
胃腸の平滑筋の異常により食欲不振、消化不良、腹痛、下痢、便秘が出現する。
マグネシウム欠乏によりカルシウムの沈着が起こる。
マグネシウム欠乏により、腸からのカルシウム吸収が妨げられる。
脂質代謝異常がおこる。また、血液中では相対的にカルシウム過剰となり、動脈硬化に至りやすい。
二日酔いには、マグネシウム、ビタミンB1 が必要。
また、アルコール中毒の人はマグネシウムが欠乏していることが多い。
摂り方
カルシウムイオンとマグネシウムイオンは兄弟ミネラルと呼ばれ、2:1 の割合での摂取が理想です。
ストレスはマグネシウムの排出を亢進させます。そのため、ストレスが多い人ほど、理想の割合が1:1 に近くなります。
以下は、マグネシウムの損失をもたらす要因です。
80 ~ 99%が損失を受ける。
利尿剤、ジギタリス製剤などによってカリウムとともに尿中に排泄される。
これらを摂取すると、マグネシウムは尿中に排泄される。
尿糖とともにマグネシウムが尿中に排出されやすい。
これらのほか、インスリン過剰症や甲状腺機能亢進症のときも、マグネシウムの必要量は増加します。

アーモンドにはマグネシウムの他に、カルシウムやビタミンEも摂れて栄養価が高い食品です。いまや牛乳の代わりとしてアーモンドミルクも定着しつつあります。

注釈
腎結石の予防のためには、ビタミンB6 を1 日10mg を、マグネシウム1 日300mg と一緒に摂るとよい。
注2
カルシウム拮抗剤投与時には、血中カルシウム濃度が上昇し、マグネシウムの尿中排泄が促されやすいので、マグネシウムを多く摂ることが必要。