ナトリウム
食塩とは塩化ナトリウムのことです。ナトリウム原子と塩素原子からできています。成人の体内には約100g のナトリウムがあります。そのうち1 /3 が骨格に、残りが細胞外液に存在しています。この細胞外液にナトリウムや塩素が多く、細胞内液にはカリウムが多く含まれます。
細胞膜を挟んで、細胞内外の液による浸透圧の差によって、さまざまな物質や栄養素が移動、排泄を行なっています。この浸透圧のバランスを保つ役目をしているのが、ナトリウムです。これは非常に大切なはたらきで、このバランスが崩れると細胞は壊され、生命活動に支障をきたします。わかりやすい例として、なめくじに塩をかけるとしぼんでしまうことはご存知の通りです。塩をかけられると、細胞の外側の浸透圧が高くなり、細胞の内側の体液が外に引き出されて、細胞の内側の水分を保持できなくなり、細胞は壊れるのです。
胃がん・高血圧のリスクを増大
ナトリウムの過剰摂取は、がんや高血圧、月経前緊張症( 注1) を起こす要因となります。
また、体内にナトリウムが溜りやすい病気や体質もあります。アルドステロン症( 注2)、肝硬変、ネフローゼ症候、慢性腎炎などがその例です。嘔吐、下痢が長く続く場合や、長期に下剤を服用する場合など、高ナトリウム血症になることがあります。
はたらき
カルシウムなどの細胞膜浸透に関与してブドウ糖などの腸管吸収をもたらす。ほかに、以下のはたらきもあります。
浸透圧とは
半透膜の内外で、圧力を一定にしようとする力を浸透圧といいます。
これは、水が濃度の低いほうから高いほうへと移動することによって起こる力です。半透膜とは、水は通すけれど溶質(水に溶けている分子)は通さない膜のことで、人の身体の細胞膜も半透膜です。
ナトリウムが増えると、水が細胞から血液中に移動しますが、細胞内のカリウムイオンの量が増えることで、水が過剰に細胞の中に入ってくることを防ぐことができます。
こうした浸透圧を保つためにはたらいている分子は、細胞内はカリウムイオン、マグネシウムイオン、アルブミンなどであり、血液中では、ナトリウムイオンなどです。
細胞膜の内側は電気的にマイナスに保たれています。カリウムイオンは自由に膜を通過し、膜の電位の安定に寄与しています。
体液のpH について
ヒトの体液は、平均pH7.35 ~ 7.45 の範囲内にコントロールされています。pH7.0 が中性で、これより低い場合は酸性、高い場合をアルカリ性といいます。体液のpH 値は酵素反応やホルモンの受容体への結合に関与し、その調節に腎臓や肺が重要な役割を果たしています。
不足すると
ナトリウムが長期に欠乏すると、消化液の分泌減退、特に胃酸の減少、食欲減退、倦怠感、精神不安などをもたらします。また、ナトリウムが急激に欠乏すると、倦怠、めまい、無欲、失神などに結び付きます。
摂り方
発汗によりナトリウムは急激に損失します。汗には約0.7 ~ 0.9% のナトリウムが含まれます。1 時間歩行すると約400ml の発汗で、ナトリウム約0.3g、ジョギング約1,000ml /時の発汗でナトリウム約0.9g、ランニング約1,300 ~1,500ml /時の発汗で、ナトリウム約1.2g の損失です。運動時の水分補給には、1,000ml の水に対して3g 以下の濃度で食塩を混ぜると良いでしょう。
注釈
月経が訪れる前に、エストロゲンとプロゲステロンの作用で圧迫感が増し、むくみをおこし、緊張、うつ状態になる症状。
注2
アルドステロンが過剰分泌され、ナトリウムの排泄が困難になる病気。低血糖症、アレルギー、ストレスなどで副腎が疲弊したり、副腎皮質の腫瘍があったりするとおこりやすい。