どうして栄養医学が必要なのでしょう
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現代医学の限界

私たちにとって、病気とはどういうものなのでしょうか。

 

現代医学にとって、病気とは人間が幸せになることを邪魔する余計なものであって、健康であることが幸せの絶対的条件のように思われています。高齢化社会と言っても、「健康でなければ」「人の世話にはなりたくない」「痴呆だけはいやだ」などと健康を前提にし、それでも長生きはしたいというのが、厳しい現実です。さらに、健康であるためには、お金が充分になければならないと、一生懸命働くのですが、そのストレスや無理が健康を損ない、病気を誘発しているのも事実です。

 

そういう人々の考え方や社会通念によって、医療の現場ではこれまで最高の技術を駆使した治療手段を採用するのが最善のこととされてきていました。そして、保険診療がそれを支えてきました。しかし、最近では治療の高額化と保険適用の不可、更に経済情勢の悪化が医療状況を変えてきています。

 

さらに、テレビ・雑誌・書籍・インターネットなどによって詳細な情報が入ってくるので、医療の知識や限界なども一般に知られるようになってきました。また、医学界でも、これまでの現代医学では対処できないことがあることや代替療法の効果も認めるようになってきました。つまり、医学についてもパラダイム・シフト(支配的考え方の変化)が起こってきているのです。そして、医師や医学会の考え方や指導に左右されない、患者や一般の人々のニーズと健康感覚にあった治療方法が模索され始めてきているのです。

患者主体の医療

そのような中で今や医学は、医師ペースな知識と技術によってというよりも患者サイドや社会のニーズによって展開されるようになって来ました。私共のクリニックでは、栄養医学を1987年の開業以来進めて来たのですが、21世紀に入ってからの患者さんの理解や受け入れ方の改善には驚いております。

 

例えば、病態改善の基本である貧血の治療が進まないので、ヘリコパクターピロリの治療を、私共は大学病院よりも5-6年早く始めましたが、栄養医学をしている胡散臭いクリニックというとんでもない認識があり、いくら説明しても治療に同意しない患者さんが1990年代にはいたものです。その他、医師や患者さんの中傷は多かったのですが、今や多くの医師が治療法を聞きに来るし、患者さんも遠くから来院されるようになりました。

 

これには、健康・ダイエットブームによってサプリメントを摂る機会が多くなると共に、アメリカなど海外からの帰国者の健康管理やサプリメントについての情報提供、そして何よりもインターネットによる情報獲得が大きく影響していると思われます。テレビでも、昨今は健康に関する番組が増え、医師が他の医師の治療の未熟さを指摘するようなことを多くの視聴者が見ていることも、実は医療情報に関する人々の主体的な収集を動機付けていると言えましょう。

 

特に精神的な症状を訴える人々が多くなっておりますが、実のところ精神科へ相談に行くことは躊躇するようです。心療内科や神経科・神経内科などへの来院も増えています。しかし、ストレスの多い社会で精神・神経の異常を起こすことも多くなり、納得のいく治療法を提供する医学は、患者にとっては少ないのではないでしょうか。この不安と現実が、情報を求める一般の人々を含めたニーズにもなっていると思われます。

「栄養医学とは」

栄養医学とは、遺伝子に組み込まれているその人の健康な状態を必要な栄養素を補給することによって回復させ、そのことによる自然治癒力を通して病気を治療していく積極的な治療法です。私たちはわかりやすく栄養医学と呼んでいますが、実際はノーベル科学賞及び平和賞を取ったライナス・ポーリング博士によって提唱された「メガビタミン療法」のことで、アメリカやカナダでは「分子整合栄養医学」と言われています。

 

分子整合栄養医学とは、身体のアンバランス・代謝を改善することにより、脳と身体に可能な限り最適な生化学的環境を与える治療法のことです。それには、最適な食事と栄養治療、つまり必要なビタミン・ミネラル・アミノ酸・酸素・必須脂肪酸などを補完することによって行います。効き目は穏やかで自然ながらも、好結果を得られるとされ、ここ40年ほどの間に発展してきた医学分野です。栄養医学と分子整合医学は共通する部分が多いですが、単なる栄養医学とは違った独自の視点を持っています。

 

〔分子整合栄養医学〕Orthomolecular Nutrition and Medicine

Molecule ;生体内にあるべき分子

Ortho   ;至適濃度に保つ

Nutrition ;充分の栄養素

Medicine ;病態改善を得る医学

栄養医学の歴史

精神科医として統合失調症へのナイアシンの効用を唱え、ライナス・ポーリング博士に栄養医学を啓発したエイブラハム・ホッファー博士は、現代は栄養医学の第3の波の時代であると指摘しています。

栄養医学の第1の波

人を病気にさせる食物や植物と、反対に人の病気を癒すものがあることを知った段階です。日常の生活に根づいており、食物の内容物を栄養成分ごとに炭水化物、タン白質、脂肪、ビタミン、ミネラルというようにグループ分けする発想に至りました

栄養医学の第2の波

ビタミンの病気予防効果がとくに注目され、ビタミン欠乏症(脚気、壊血病、くる病、ペラグラなど)の予防として用いられるようになります。炭水化物、タン白質、脂肪の三大栄養素が必要量に達していても、それだけでは不十分であり、加工食品中心の食生活では健康状態を良好に保つことができないことが分かってきます。1900年代初期、三大栄養素以外の未知の成分として「ビタミン」の存在の特定に成功します。しかし、このときの医学の世界では、病気の原因は細菌であるという考え方が主流だった為、病気が栄養成分の欠乏によって起こり、健康を維持するには食物に含まれている栄養成分が役に立つ、という考え方は殆ど無視されました。

 

やがて、ビタミンが人工的な化学合成によって作れるようになり、食物だけでは不足しがちな栄養成分をサプリメントとして補うことは、医学治療に使われる薬剤よりもずっと安全なものであることも分ってきました。しかし、ビタミン類が病気の治療という目的で使われることはまだなく、あくまでもビタミン欠乏症の予防として用いられる「限定条件付き」で一般にも広く普及してきました。こうした栄養医学に対する限定条件は、今日に至るまで根強く残ってはいます。この限定条件は以下のとおりですが、栄養医学を理解していない医師の態度として理解しておく必要があります。

 

×1.サプリメントは食事中に栄養素が不足している時だけ必要である。
×2.ビタミン類を欠乏症の予防の為に用いる際、少量で十分である。
×3.ビタミン類を使用する目的は、欠乏症の予防以外にはありえない。
×4.欠乏症の予防以外の目的でビタミン類を使用しても無駄であり、尿に排斥されるだけである

栄養医学の第3の波 (分子整合栄養医学)

栄養成分は、病気予防だけでなく、完全に治療を目的として使用されます。高容量のビタミン類使用が、その欠乏症と考えられる以外の病気に非常に有効であることを証明した研究論文が数多く出されました。この立場は次のようなものです。

 

○1 食事がどんなに完璧であっても、心理的・生理的ストレスにさらさ れている人の場合には、食事だけで健康状態を維持するのは難しい。また、完璧な食事を摂ること自体が難しくなっている。

○2 ビタミン類の栄養サプリメントは、個人や状況そして季節などによって最適量が異なり、心理的・生理的ストレスの質と程度によって補給量を調整しなければならない。

○3 ビタミン欠乏以外の理由で起こっている病気が、栄養サプリメントを最適量で補給することにより改善される。

○4 栄養サプリメントの正しい補給と、最適で完全な食事が人体にとって最高の治療薬になる。

他の医学との違い

現在の医学は対症療法であり、薬物療法と外科的処置などによって、身体全体には害を与えてもその局所的症状をより改善しようとするものです。強力な薬剤を開発し処方したり、病変した部位を切除したり、薬物を注入したり、或いはその他の科学的(化学的)治療をすることが図られています。医者として現在の症状を和らげるために副作用を覚悟で薬物を用いることはありうることですが、病気に対応できる体力を形成、維持する健康管理に患者の注意を促すことは欠かしてはならないことです。

 

現代社会は、働くこと、利益を上げること、効果を出すことに一生懸命で、自分の身体にも無理を強いて、そこから最大限の効果を持ち出そうとしています。「人の一生の心拍数は、どの人もほとんど同じであり、落ち着いて心拍数を少なく暮らす生活を生きれば長生きできるものだ」と言われることもありますが、短期間に身体を酷使して、そのために薬や食事を摂ろうとすることは無理なことです。