食物繊維
食物繊維は、人の消化酵素で消化されない、難消化性炭水化物の総称です。体調を整えたり、生活習慣病の治療、予防に役立ったり重要な生理作用があるということで、近年脚光を浴びています。
日本人の食物繊維摂取量は、第二次世界大戦後減少し続けています。原因は穀類、豆類の消費量が減少し、精製加工品の利用が増えたことにあります。毎日の食事に意識的に食物繊維を取り入れる必要があります。
はたらき
食物繊維は、水溶性食物繊維( 注1)と、不溶性食物繊維( 注2) の2 つに分けられ、それぞれ異なる特徴をもっています。
胃の幽門部を高分子である食物繊維がふさぐため、胃から小腸への食べ物の移動が緩やかになり、小腸でブドウ糖や脂肪がゆっくりと吸収されるようになる。そのため急激な血糖値上昇を防ぎ、インスリンの産生に負担をかけないので、糖尿病、肥満予防にも役立つ。
血中のコレステロール上昇を抑制し、脂質異常症を予防する。
水溶性食物繊維は腸内細菌の栄養となる。
そのため、乳酸菌など善玉菌を増やし、腐敗を減らすので大腸がんの予防になる( 注3)。
腸内細菌が水溶性食物繊維を発酵させ、大腸内を酸性寄りに保つため、アルカリ性の環境下で産生されやすい発がん性物質の毒性を軽減する。
便秘の解消に効果がある( 注4)。
不溶性の食物繊維は、水分を含ませるので便のかさを増す。すると排便しやすくなり、便秘の解消に役立つ。また、発がん性物質の濃度を薄めることになり、大腸がんの予防になる。
大腸の動きを活発化し、発がん性物質が大腸粘膜に長時間触れることなく速やかに排出されるので、大腸がんの予防になる。
不足すると
不足すると、腸内の善玉菌が増えにくくなり、胃腸症状を起こしやすくなります。
糖や脂肪の吸収が速くなり、そのため、糖尿病や肥満、脂質異常症、コレステロール結石、高血圧も起こりやすくなります。
有害物質や腸内の栄養バランスも悪くなりがちで、がんの発生リスクも上昇します。
摂り方
食物繊維はさまざまな種類があり、種類ごとに生理作用が異なるので、1 日3 回の食事で多種類の穀物やいも類、豆類、野菜をきちんと摂るようにします。
米食なら玄米、胚芽米のほうが望ましく、精白米の場合は押し麦を入れるとよいでしょう。パン食ならライ麦や全粒粉のパンを選びましょう。それに加えて、いも類、豆類を多く摂るようにします。野菜は根菜、葉物などをとり混ぜ、海藻類も忘れないようにしましょう。
食物繊維の1 日の目標量は、成人男性20g /日以上、成人女性18g /日以上です。
16種類の雑穀全てが有機栽培されたもの。食物繊維は食品ごとに種類や作用が違うため、雑穀の種類が多いほど良いとされています。毎日食べて快適な腸内環境をキープし続けてください。
注釈
水溶性食物繊維は、その名のとおり水に溶けやすい食物繊維である。代表的なものに、果物に多く含まれるペクチンや、こんにゃくの主成分であるグルコマンナン、昆布など褐色の海藻の細胞壁の主成分であるアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
注2
水に溶けない性質をもつ食物繊維。代表的なものに、植物の細胞壁の主成分であるセルロースや、甲殻類のからの主成分であるキチンなどが挙げられる。
注3
ピロリ菌除菌時の抗生物質による副作用を防止し、腸の宿便を排泄することで薬の効果を高める作用がある。
注4
痙攣性便秘の場合は、不溶性食物繊維を大量に摂ると、便秘が悪化することがあるので注意が必要。