ビタミンA
ビタミンA は、夜盲症(鳥目)の予防や粘膜の強化などのはたらきがあることで知られている脂溶性( 注1) のビタミンです。ビタミンA は、レチノイド(レチノール、レチナール、レチノイン酸)と、カロテノイド(βカロテンなど)に分けられます。レチノールは主に肉類、卵、乳類、魚介類などの動物性食品に多く含まれ、カロテノイドは主に緑黄色野菜などの植物性食品に多く含まれます。
カロテノイドとは、自然界にある赤や黄色の美しい色素の総称です。カロテノイドは約600 種類発見されていますが、そのうち人の体内にあるのは50~ 60 種類です。
カロテノイドのうち、ビタミンA に変えられるものが5 ~ 10%程度あり、その中で代表的なものがβカロテンです( 注2)。βカロテンからビタミンA(レチノール)に変換される率はおよそ20%です。( 注3)
はたらき
ビタミンAのうち生理活性作用を発揮する物質は、主にレチノールとβカロテン( 注4)です。カロテノイドは体内で発生する活性酸素を除去したり、がんの予防や改善にも大きな効果があることがわかってきました。主なはたらきは以下のとおりです。
粘膜の成分であるコンドロイチン硫酸の生合成を促進し、のどや気管支、胃腸の粘膜などを保護する。
細胞内での遺伝情報の伝達に関与。細胞の分化を正常に誘導する。
皮膚や毛髪に潤いを与える。にきびを改善する。
レチノールは、光感受性物質であるロドプシン( 注5)と色覚に作用するアイオドプシンを合成する。
上記のほか、生殖機能の維持に寄与する、成長促進作用がある、味覚聴覚機能に関与する、抗酸化作用(カロテノイド)がある、などのはたらきがあります。
不足すると
ビタミンA が不足すると、粘膜や皮膚が弱くなったり、分泌腺が委縮するなどの症状が現れます。その結果、次のようなさまざまな症状を引き起こします。
風邪をひきやすい、ポリープができやすい、胃腸、婦人科系のトラブルが起こりやすい、眼球の乾燥による感染を招きやすい、うおのめやいぼができやすい、手やかかとが荒れやすい、アレルギーになりやすい
ビタミンA が不足すると、がんにもかかりやすくなるという研究結果がある。
不妊や流産、奇形、貧血を起こすことがある。また、乳汁分泌の低下を起こす。
骨、歯の発育が悪化し、骨折しやすくなる。
暗い所で物が見えにくいなどの障害が現れる。
舌の味蕾が角化し、味覚に異常が起こる。
上記のほか、成長が停止し体重が減少したり、貧血を起こしやすくしたりする場合があります。
摂り方
ビタミンAサプリメントは、品質表示のしっかりしたものを選択し、できれば天然由来のものを摂るようにしてください。特に、レチノイン酸のみの摂取は注意が必要です( 注6)。
ビタミンA の摂り方として次のようなポイントが挙げられます。
ビタミンA は、体内でタンパク質と結合して( 注7)運ばれる。タンパク質不足になると、ビタミンA の利用度が低下する。
ビタミンE、C、ポリフェノール、リコピン( 注8)、フラボノイド( 注9)、グルタチオンなど他の抗酸化物質と一緒に摂ると、お互いの酸化を防ぎ、活性が高まることが期待できる。
亜鉛は肝臓に貯蔵されているビタミンA を取り出すときに必要。
βカロテンは、油と一緒に摂ると80 ~ 90%吸収されるので、料理の際は油を使った料理にすると効果的。
乳幼児ではβカロテンからレチノールへ変換する機能が未成熟なため、ビタミンA の補給には動物性食品に多いレチノールの形で摂取するのが効率的。
ケールは身体の中でビタミンAに変換されるβカロテンが豊富。その他のビタミン・ミネラルが豊富でまさに野菜の王様です。
注釈
油脂によく溶け、水には溶けにくい性質のこと。
注2
βカロテンは、体内でビタミンA のレチノールに変換されるので、プロビタミンA とも呼ばれる。
注3
カロテン→レチノール→レチナール→レチノイン酸という順に代謝される。
レチノールやレチノイン酸は、それぞれレチノール結合タンパク、レチノイン酸結合タンパクに結合して運搬される。タンパク質に結合していないビタミンA は酸化されやすく機能も不安定である。
注4
ビタミンA の単位は、レチノール当量(μ gRE)で示す。1μ gRE =βカロテン12 μ g。以前使用されていた国際単位1IU は0.3 μ gRE に相当する。
注5
タンパク質の1 つ。
網膜に分布し、光を感知して他の細胞に情報を伝える。光刺激によって、分解と合成をくり返す。
注6
レチノイン酸は、特に骨や神経系の分化、形態形成に関わっている。レチノイン酸は、核のDNAを調節する作用がある。通常、短時間で酵素により代謝を受けるが、合成のレチノイン酸については注意が必要である。サプリメントのビタミンA は、品質内容の表示があるものを用い、できれば天然のものが良い。
注7
レチノール結合タンパク(RBP) と呼ばれるタンパク質。
注8
カロテノイドの1つ。トマトに多く含まれる。抗酸化作用があると考えられている。
注9
水溶性の植物色素の1 つ。抗酸化作用があり、毛細血管を丈夫にするはたらきがあることが知られている。