レシチン
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レシチン

大豆や卵に多い成分

人の身体は60 兆個の細胞で構成されています。
その細胞の1 つ1つは、それぞれにいくつもの部屋のようなものをもっており、各々が膜で仕切られています。その膜を生体膜と呼びます。細胞は水分を除くと、80% がこの生体膜で占められています。この生体膜を構成する物質の中に、リン脂質という成分があり、これが生体膜の30% を占めています。このリン脂質の一種がレシチンと呼ばれるものです。
レシチンの主要成分はホスファチジルコリンという成分です。ホスファチジルコリンは、脳神経細胞のシナプスにはたらき、神経伝達物質のアセチルコリンを作り出す材料の1 つです。
レシチンは細胞の代謝機能を促進し、円滑にするはたらきがあるので、細胞に活力を与え、再生を活発にします。また交感神経の緊張を和らげ、安息をもたらします。脳や神経の病気の予防にも効果があります。

はたらき

さまざまな代謝を促進

レシチンは生体膜の主要構成成分であり、栄養素の代謝、薬物代謝、エネルギー代謝、ホルモンなどの代謝機能を促進します。栄養素をバランス良く取り入れたり、余っている栄養分や不要物質、有害物質を排出したりします。脂溶性ビタミンA、D、E、Kの吸収を助けます。これらにより自律神経失調症、心臓病、糖尿病、脂肪肝などに有用であり、美肌効果も期待できます。

血管内を浄化する

コレステロール、中性脂肪を適正な値に保ち、血液の状態をサラサラにするので、血行が良くなり、血液循環を円滑にすることで、動脈硬化を予防する。「血液の洗剤」と呼ばれる。また、脂肪肝、脂肪膵、肥満を防ぎ、動脈硬化、高コレステロール血症、高トリグリセライド血症などに有用。

記憶力、集中力を高め、精神を安定させる

脳細胞、神経細胞にはたらく。うつ病、幻聴の一部、自律神経失調に作用する。レシチンが関与して作られるアセチルコリンは、記憶に関わる海馬の神経伝達物質であるため、記憶力低下にも有用。

不足すると

交感神経が優位になり身体の緊張状態が続く

レシチンが不足すると、副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンが不足して交感神経が優位になり、身体は緊張状態になります。また、脂肪がたまりやすくなり、さまざまな生活習慣病に結び付きやすくなります。また、細胞膜の組成バランスが崩れ、透過性・弾力性・流動性に支障をきたし、細胞内への栄養の取り込み、老廃物の排泄、神経の情報伝達がうまくいかなくなります。そのため、老人性認知症になりやすくなったり、神経・精神症状が出やすくなったりします。
日常生活では以下のような理由でレシチンが不足しがちです。

加工食品の多用

殺菌、熱処理などによってレシチンが破壊される。

ストレスにさらされた環境

脳神経細胞、自律神経細胞にあるレシチンが消耗し、不足してくる。

摂り方

酸化を防ぐためにビタミンEと一緒に摂る

レシチンの中に含まれているホスファチジルコリンは体内活性が高く、この物質の含有量で品質が決まります。レシチンは体内で酸化されやすいので、ビタミンEと一緒に摂ると効果的です。

レシチンを多く含む食品

レシチンを多く含む食品は、大豆と卵黄です。レシチンには水と油を混ぜ合わせるはたらきがあるため、食品製造業では主にマヨネーズや菓子類などに「乳化剤( 注1)」として利用されています。

大豆レシチン

卵黄レシチンより多価不飽和脂肪酸が多く含まれるため、コレステロール改善を期待するのであれば大豆レシチンを選ぶとよいでしょう。大豆は皮に含まれる食物繊維も余分なコレステロールを低下させたり、オリゴ糖が含まれるので腸内環境を整えたりします。

卵黄レシチン

ホスファチジルコリンは大豆よりも卵黄に多く含まれています。卵はホスファチジルコリンの他にもタンパク質やビタミンなどを豊富に含み、栄養価が高い食品です。

リン脂質

分子内にリン酸を含む脂質のことで、ホスファチジルコリンの他にホスファチジルセリンやセラミドなどがあります。
リン脂質はコレステロールなどとともに細胞膜の構成成分であり、また、脳神経系にも多く所在しています。
ホスファチジルセリンは、記憶力や集中力を高めるという研究が行われており、老人性認知症やADHD( 注意欠陥・多動性障害) への有効性が報告されています。食品では牛の肝臓や脳、大豆などに含まれています。ホスファチジルセリンはホスファチジルコリンとの複合摂取により相互作用が期待できます。

注釈

注1
乳化とは本来混ざり合わないもの同士(水と油など)が混ざり合い、均一な状態になっていること。