栄養素の摂り方、その基本をまずは知る
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栄養素は外からの供給が不可欠

栄養医学の土台を支えているのは各種サプリメントです。サプリメントの素材となっている栄養素にはタンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などがあります。このうちビタミンの種類は約 15 種類(ビタミン様物質を含めると約 20 数種類)です。ミネラルは 107 種類ありますが、このうち人の身体には約 40 種類存在しています。

水溶性ビタミンと脂溶性ビタミン

ビタミンは大きく水溶性のものと脂溶性のものとに分けられます。
代表的な脂溶性ビタミンは、ビタミンA、E、D、K があります。脂溶性ビタミンは細胞膜を容易に通過する性質があるため体内に蓄積されやすいのが特徴です。
一方、代表的な水溶性ビタミンにはビタミン B 群、C があります。
水溶性のビタミンは細胞膜を通過しにくく、代謝される時間も短くておよそ 3 時間程度で腎臓から体外に排泄されます。ビタミン B 群のいくつかは腸内細菌からも作られていますが、十分な量とは思われません。体内ではビタミン C は合成されないので、外から供給する必要があります

供給が必須のミネラル

ミネラルの中で、人間の生命活動を維持するために必要な栄養素として欠かせないことがわかっているものを「必須ミネラル」と呼びます。必須ミネラルのうち、1日の摂取量が 100mg 以上のものを主要ミネラル(カルシウム、リン、カリウム、硫黄、塩素、ナトリウム、マグネシウム)、100mg 以下のものを微量ミネラルと区別します。微量ミネラルはさらにⅠ~Ⅲに分けられ、そのうち1日の摂取量が 1mg以上 100mg 未満のものを、微量ミネラルⅠ(鉄、亜鉛、銅、マンガン)に分類しています。ミネラルは体内で合成されないので、必須ミネラルは外からの供給が欠かせません。

効果が実感できるまで最低 2 か月

サプリメントによる治療効果は、その栄養素の濃度が病変の現れる部位の組織において一定の濃度(至適濃度)以上に達し、その濃度が持続した場合に期待できます。それらの栄養素はもともと体内に存在している要素でもあり、通常の身体のはたらきを維持するために使われているものです。

例えばエネルギーを作り出したり、あるいはホルモンや酵素、細胞の構造物質など生命の維持に必要な材料を使ったりするために消費されています。栄養素を摂取すると、その栄養素は、まずそうした身体の基本的な機能を作り出す部分に用いられ、栄養が満ちてくると足りない部分にも行き届くようになり、病変を矯正・治癒するはたらきが現れるのです。すると次第に健康回復が本人の自覚としても、外見からも現れてきます。ここまで回復するためには栄養を十分に摂取し始めてから最低約 2 か月はかかるのが普通です。 栄養素の中には、すぐに効果の出るものと、そうでないものとがあります。ビタミン B 群を摂取すると、まもなく身体に活気が出る効果を感じます。それに比べ、EPA やレシチンなどは、細胞膜の成分としてその役割を果たすまでに、約 1 か月半程度かかります。

栄養素によるこうした作用は、後天的にできた病変を治癒してゆくばかりではありません。先天的、遺伝的に持っている体質をも改善することができます。たとえばインスリン受容体のはたらきを改善して糖尿病のリスクを軽減したり、神経伝達物質の作用する細胞の受容体のはたらきを整えたり、アレルギー体質を改善したりすることなどです。

体調回復には時間とゆとりが必要

治療経過の中でもっとも大切な時期は、回復の兆しが現れ始めた頃です。この時期に身体が活性化して「元気が出た」とか「調子がよくなった」というふうに自覚しても、内臓や自律神経の機能が回復した結果ではありません。体調が回復するためには時間とゆとりを持って、栄養治療をさらに続ける必要があるのです。
「調子が良くなった」と実感しても、その後少し落ち込む時期が来ることもあります。そのような調子の波を繰り返して、本当の回復に向かっていくのです。そして、体調が安定してくると、体内のホルモンや自律神経のはたらきが整い始め、内臓も機能を回復してホメオスターシス(生体恒常性)が向上してきます。ここまできて初めて、心身ともに健康を作り出すためのトレーニングが可能となります。
栄養素を摂取すると、体内の酵素のはたらきに格差が出てきます。摂った栄養素により身体が活性化してくると、その人に不足している栄養素による影響が現れたり、摂らない栄養素が相対的に不足したりすることによる反応が現れます。例えば、体調、皮膚の状態、自律神経が不安定になることがあります。これは、さらに最低約 1 か月くらい経って体内の酵素やホルモンなどのはたらきが安定すると落ち着いてきます。

単独ではなく複合摂取を

全ての栄養素は複合的、相関的にはたらくため、単独で摂取するより総合的に摂取した方が効果はより大きく現れます。ビタミンはミネラルなしには機能しないし、タンパク質なしには、その他の栄養素は機能しません。ビタミン B 群のサプリメントは、B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6 をそれぞれ同量含有しているものが身体により効果的です。不定期に摂るより、1 回の量は少なくとも必要な種類のものを定期的に摂る方が、効果はあがります。

必要量や効き方には個人差がある

各栄養素の必要量や効き方には、大きな個人差があります。血液の性状、細胞膜の流動性( 注 1)、体内の pH、酸化ストレス( 注 2)の度合いなど、人によって体内の環境はさまざまです。また、その日の体調や気候の変化、ストレス度、年齢、病気の有無などによっても、必要量は変動します。

栄養療法の副作用は小さい

栄養療法で副作用が現れたとしてもそれほど深刻なものはありません。もし副作用が出たら、量を少なくすると軽くなるか消えます。また、摂取を中止すれば副作用による影響を残すことはありません。さらに、体調が向上すると、副作用が現れにくくなります。例えば体内の消化酵素が増加すると、プロテインを飲んだときに現れがちなお腹の張りが気にならなくなっていきます。

栄養医学と栄養学は異なります

この本で提唱しているサプリメント摂取量の目安や摂り方は、一般の栄養学などで勧められているサプリメントの必要量などとは異なり、第1章で述べた「栄養医学第3の波」としての治療目的のものです。
個人判断で「このサプリメントを摂れば治る」と摂取するのを推奨するものではありません。血液検査などのデータに基づいて、栄養医学を実践する医師との共通理解にたち、健康自主管理のガイドブックとして用いるためのものです。

注釈

注 1 細胞膜の構成成分(リン脂質や膜タンパクなど)は、ある程度自由に動きながら、 細胞膜の機能を保っている。これを、細胞膜の流動性という。

注 2 身体が酸化されることにより、正常な活動が損なわれること。